ライカ ジオシステムズのレーザー距離計は、1993年以来、常に最新テクノロジーを世界に先駆けて採用し、多くの建築業務に役立つ機能を提案しています。近年では、距離と角度の測定結果から2点間距離測定が行えるP2P(Point-to-Point)機能を搭載したモデルを市場導入しています。しかし、従来のピタゴラス測定とどう違うのか、P2P測定の結果から、どのように実際の実務に活用できるのか知りたいと思う方も多いはずです。
そこで、事例紹介として、宮崎県都城市のタナカホームさまへお伺いし、Leica DISTO X4 (P2P テクノロジー)での空間情報取得、そして、測定データをどのように活用されているかをインタビューを行い、実際のワークフローを説明していただきました。
Passive House?
タナカホームさまは、家の効率設計の厳しい基準を定めるパッシブハウスとをクリアした高断熱・高気密の高性能住宅を推進しています。いまから16~17年前、田中誉宗さま(代表取締役社長)がドイツへ建築市場の視察へ行った際に出会ったのが始まりだそうです。現在、日本では8人のみというドイツのパッシブハウスの認定を一昨年に受け(Passive House Institute 公認 Certified Passive House Designer)、宮崎県や鹿児島県を中心にパッシブハウスの基準を満たした物件を手掛けています。
パッシブハウスの認定を受けるためには、厳格に策定された基準を満たす必要があり、特に、窓に関する専門的技術が重要です。それがどのようなことかというと、「冬の一番寒い日に、1,000Wのドライヤーで100㎡の広さの建物が20℃を切らない。」という驚くべき熱効率です。また、太陽光を効率よく得るために土地探しも大切な構成要素になります。なぜなら、影の影響がどの程度あるのかを評価されるからです。経験やノウハウを駆使し、自然の力と建物の性能を考慮した家づくりが行われています。日本でもトリプルガラスの窓が発売されたことも、技術的なアドバンテージを得られたそうです。
モデルハウス (タナカホーム 都城本社)
Measurement by P2P Measurement
弊社との繋がりは、2021年5月に、北神久幸さま(営業部 企画課 主任)から、Leica DISTO X4の問い合わせをいただいてからになります。どのようにして、X4を見つけたのか、どのような事情があったのか等、当時のことをお聞きしました。「製品を見つけたのは、インターネットです。現地調査を外注に出すこともできないし、コストバランスを考えると、レーザー距離計がよいと判断しました。」と話されています。
パッシブハウスには、新築物件の土地だけでなく、近隣の建物の情報が必要になります。従来の現地調査はメジャーで測る他なく、パッシブハウスの解析に必要な空間情報を得るのは事実上不可能でした。現在、X4 P2P packageとDISTO Planを駆使して測定をされていますが、「P2Pなしでは、現調はできない。つまり、パッシブハウスが成り立たないです。」ようになっているそうです。
しかし、製品購入後、すぐに縦横無尽に使用できたかというとそうではなかったとお話されています。まず、レーザー距離計自体を知らなかった、また、トータルステーションについても知識がほとんどない状態からのスタートです。はじめての現場では、P2P測定がどう作動するかを見極めるように努め、2~3棟目からは、十分にコツを掴んで、測定が行えるようになりました。Leica DISTOは、測量の専門的知識がなくても使用できるように設計していますので、要領を得れば、スムーズに使えるというフィードバックを得ることができました。
DISTO X4 P2PとDISTO Planアプリを使用した現場調査 (ターゲットが必要なため、2人1組で実施しても、短時間で調査が終了)
Data Workflow
タナカホームさんが実施する測定、データ作成、パッシブハウスのモジュールによる分析/解析までのワークフローは、下記のようになります。
1.- 敷地、周辺空間情報をLeica DISTO X4で測定し、DISTO Planに転送 (細かい情報はコンベックス使用)
2.- 敷地にあわせてDISTO PlanからエクスポートしたDXFを配置 (※DXFは近隣建物の配置)
3.- DXFに合わせて、予め作成した近隣建物の3Dを配置
4.- CAD(ArchiTrend)でのパースモニタ。ここから3DS形式でエクスポート
5.- SketchUpにインポートし、不要な面データの削除や位置情報等の埋め込み
6.- プラグインアプリに、地理、気候情報などの必要情報を入力し、分析/解析
2.- 敷地にあわせてDISTO PlanからエクスポートしたDXFを配置 (※DXFは近隣建物の配置)
3.- DXFに合わせて、予め作成した近隣建物の3Dを配置
4.- CAD(ArchiTrend)でのパースモニタ。ここから3DS形式でエクスポート
5.- SketchUpにインポートし、不要な面データの削除や位置情報等の埋め込み
Summing it up
メールや電話を通して、DISTO P2Pの活用方法を聞いていましたが、実際のワークフローは予想していた以上のことを、DISTOとDISTO Planアプリ(dxfエクスポート)で実施されていたことに驚きを超えて、感銘を受けました。測定結果をメモするのではなく、完全なデジタルワークフローが確立しています。一方、世界で6,000棟以上がパッシブハウスの認定を受けていますが、日本国内で、2024年1月19日現在、83棟(Passive House Database)にとどまっているため、「日本でのパッシブハウス認定数を増やしていきたい。」とタナカホームさまは考え、活動されています。